会計ソフトは確定申告を簡単にしない

『会計ソフトを使えば確定申告が楽になる』という謳い文句を信じた方も多いでしょう。私もその一人でした。しかし、マネーフォワード クラウド確定申告を実際に使って気付いたのは、会計ソフトが税務の本質的な課題を解決しない現実です。

2024年分についてe-Taxの代わりにこのサービスを使ってみたのでその経験を語りたいと思います

仕訳帳入力の難

仕訳帳入力について基本的にクレジットカードの明細などをスクレイピングで取得するMFお得意の方法が想定されているようです。 私は件数が非常に少ないのと専用カードや口座は作っていないので手入力したのですが、そうすると劣化ExcelのようなUIで非常に使いにくい。お金払ってこれかという気持ちになる

青色申告の難

せっかく会計をつけたのに青色申告決算書に完全に自動反映をというわけではなく、いくらか手入力があります。 面倒な点でいうと「売上(収入)金額の明細」などの項目は自分で取引先ごとの総額を計算して上から手入力して言う必要があります。なぜ…

確定申告の難

確定申告では多数の項目を入力する必要があります。やっていると途中で気づいたのですが「これe-Taxと入力項目同じでは?」 そう、e-Taxを似たような別のUIで実現しているだけで、ここではマネーフォワードは何も効率化してくれていないのです。

さらに私の場合海外ETFについて外国税額控除を申請しているのですが、これの明細出力にはマネーフォワードはまったく対応していません。結局、煩雑なエクスポートとe-Taxでのインポート(xtx形式なので確定申告書作成コーナーでは使えずWindows版をインストールして悪戦苦闘するなど)作業をするはめになりました。

最初からe-Taxを使っていれば半分くらいの時間で終わっていたのに…

会計ソフトへの期待が間違っている問題 ── 会計と税務は「別物」──

このあたりで自分の認識が間違っていることに気づきました。会計ソフトは会計を効率化してくれるソフトであり、確定申告は90%の作業が税務です。 そして会計ソフトの税務はおまけなので劣化版e-Taxにしかならないですし、e-Taxがやっていない効率化などは税務判断になってしまう可能性があるため積極的ではありません。

会計ソフトの『確定申告機能付き』という宣伝文句は、ESTA代行サイトが『手数料で楽に申請』と謳いながら、結局は自分で入力させる構造と本質的に同じです。検索上位の代行サイトは手数料を取るだけで、結局は自分で公式サイトと同じ情報を入力させる。同様に、会計ソフトの税務機能も「入力フォームを提供する」以上の価値を発揮しないわけです。どちらも『手間を省く』という幻想を売り、実際には形式上の効率化しか提供しません。

会計ソフトも自社を使ってほしいため税務は支援しませんとは言わないのでなかなか気づくことがないわけですが。

どうすればよかったのか

会計ソフトは帳簿作成ツールと割り切りましょう。そのため任意のソフトを使うことができ青色申告機能については気にする必要はありません。青色申告に必要な損益計算書を作る機能はほぼすべての会計ソフトについているため、その出力をe-Taxで手動で転記(勘定科目ごとのまとめなど、20項目くらいの数字)すれば済みます。自分の場合記録の数が少ないこともあり、2025年についてはオフラインの簡易的なソフトを使っています。

確定申告については税務の学習コストを明確に認識して気合をいれてやるしかありません。複雑な控除を申請する場合、国税庁ガイドラインやQ&Aを自ら読解する時間を確保しなければならないです。これを効率化したい、代行してほしい場合はソフトやサービスでの選択肢は存在せず、税理士に頼む必要があります。

申請自体はe-Taxでやりましょう。Webの確定申告コーナーの使い勝手はそこそこです。Windows版は全然違うし使いづらいのでやめておきましょう

つまり

我々が確定申告と認識していたものは「会計」と「税務」に分かれていた。会計は事実を整理する作業だが、税務は法律を適用する行為でした。後者は自分でやるか税理士に頼むかの二択しかありません。

厳しい現実ではありますが、『会計ソフトは帳簿作成、税務は自分か専門家』という線引きを明確にすれば、無駄な期待を捨て、時間を有効活用できます。2025年の確定申告では、この割り切りがあなたのストレスを軽減するはずです。